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ロシア、サンクトぺテルブルグで演劇の演出を学んでいます。ロシアの演劇学校の授業内容。さらに、ロシアを中心としたヨーロッパ演劇の現状についてお伝えします。
福岡市拠点文化施設基本構想案に意見を書いた感想
文化振興課に意見を書いて思ったことは、この意見は私に関する限り、演出家としての主観を述べる必要があるということだ。結局あまり意見に客観性を持たせようとしすぎると意見が言えなくなる。この意見はアーティストや市民が行政や文化政策の専門家からなる専門員に自由な意見を言う場だからである。

しかし日本の文化政策関係者、演劇学研究者は欧州の芸術監督制の劇場や俳優養成は日本になじまないと言う人が多い。しかし、世界演劇史を見ると、何故西欧より200年俳優養成が遅れていたロシアが19世紀まつのスタニスラフスキーの登場で西欧の俳優育成を抜いたかという理由をしらない無知さからくることがわかる。スタニスラフスキーはロシアは遅れていたので西欧各国の俳優訓練、心理学、身体生理学について徹底研究し良いところを利用し、それに自分の考えを会わせて体系化したのだ。『俳優の仕事』を読めばどれほど多く西欧の俳優の演技が引用されているかが分かる。やはり日本ではこの15年文化政策が流行ったが、俳優養成にかんして殆ど前進していないのは文化政策研究者や演劇制作者・研究者の世界演劇史関する知識が無さ過ぎることに一つの原因がある。また舞台上の実践で演技システムを体現しなければならない俳優・演出家とことなり、文化政策研究者や制作者・演劇研究者が俳優養成システムを理論上で学ぶのはそれほど難しいことではない。つまりスタニスラフスキーシステムに関していえば、『俳優の仕事』読んで理論的に理解するのと、それを舞台上で実現できるのでは巨大な差があるのである。
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福岡市拠点文化施設基本構想案について3度目の意見を書いた
これが3度目だが、再び福岡市拠点文化施設基本構想(案)についての意見を述べる。今回も概要版を基に意見を言っていく。



運営組織3ページ目について、事業部門の責任者として芸術監督を置くべきだという意見はすでに述べた。今回の意見では芸術監督の人材について述べる。芸術監督は新国立劇場芸術監督と同等の芸術的実績、経験、国際演劇・舞踊・オペラ制作経験が求められる。なぜなら、無数に舞台芸術専用文化施設がある東京の新国立劇場芸術監督は劇場の芸術的水準の維持だけに集中できる傾向があるが、150万都市に一つだけの福岡市拠点文化施設の芸術監督は新国立劇場よりの重圧のかかる責任ある仕事といえるからだ。また、演劇、舞踊、オペラの各部門に新国立劇場と同じように芸術監督を設置することが望ましい。また演劇、舞踏、オペラの3部門を調整する役割として、ドイツの地方公共劇場のようなIntendantを置くべきである。Intendantを置かなければ、これら3部門のバランスが取れない。もちろんIntendantは芸術監督以上の芸術的実績、経験、国際演劇・舞踊・オペラ制作経験が求められる。Intendantは適切な人材であれば、海外から招待するのも良い考えである。



また芸術監督の権限の中で最も重要なものを上げる。たとえば演劇部門の芸術監督は5人程度の契約演出家を選定できることとする。また芸術監督や契約演出家の演劇的思想や考えを演技芸術として舞台で体現できる俳優のアンサンブルを40人程度持てる必要がある。これらの契約演出家・俳優の契約期間も1期3年とし3回更新の9年契約を最長とすべきである。



また演劇部門でいえば、芸術監督・演出家、俳優のアンサンブル、舞台スタッフはこの拠点文化施設のレパートリーを生み出す優れたメカニズムを確実にかつなるべく早く作らなければならない。たとえば拠点文化施設の先進地である欧州でその劇場のレパートリーを持っていない劇場は拠点文化施設として認められていないからである。毎年20程度演劇作品を上演できなければならない。その上演された作品の多くが10年単位で再演される質の高いものでなければならない。さらにそのなから優れた作品が50年単位で上演されるドイツ・ロシア型のレパートリー・システムを将来目指すべきである。ここで確立される演劇作品のレパートリーが福岡市とそれをとりまく地域のアイデンティティとなっていかなくてはならない。ロシアのレパートリーシステムの重要な確立者・俳優教育者として世界の演劇史で最も有名なスタニスラフスキーは新劇場は10年程度でレパートリー・システムを確立しなければならないと言っていたと思う。



欧州の拠点文化施設の例をまた再度上げておく。

ドイツ:

1)シュツットガルト州立劇場(オペラ、演劇、バレエの3部門)3部門全てで世界水準の評価を確立し、Intendantを置いている。ちなみにオペラ部門の芸術監督はJossi Wieler(ヨッシ・ヴィーラー)氏である。ヴィーラー氏はベルリン演劇会議というドイツ語圏の演劇フェスティバルで最高のものに演劇演出作品が何度も招待されており、オペラ演出家、としてもドイツ語圏最高の評価を得ている人材である。さらに彼は日本(シアターX、東京)で鶴屋南北作『四谷怪談』を演出し、ベルリン演劇会議のヨーロッパ部門に招待されるという快挙を成し遂げている。まず、シュツットガルトでヴィーラー氏に意見を聞くのも良い方法である。

http://www.oper-stuttgart.de/



2)ハンブルグ・バレエ団http://www.hamburgballett.de/



重要なことなので再度申し上げる。この意見が着信したかどうか着信確認の返信をしてください。よろしくお願いします。





福岡市拠点文化施設基本構想案についての意見を福岡市に書いた
福岡市拠点文化施設基本構想案についての意見を福岡市に書きました。まだお書きになっていない方がいらっしゃいましたら参考にしてください。ちなみに私は2度書きました。

拠点文化施設の整備場所9ページ目について、須崎公園地区は現在ホームレスの人たちが住む場所となっている。この場所を再整備する際は、この土地の記憶としてホームレスの人たちによる彼らの生活についての舞台を上演してはどうだろうか?まず、ホームレスの人たちの生活を知ることからこの地区の再整備を始めてほしい。またこの地区に住むホームレスの人たちの生活の自立についても考える必要がある。
また、再整備の際は全般的にこの土地の記憶をホームレスの生活の例のように取り入れることが必要である。

拠点文化施設の機能 10ページ目について、
① 創造発信機能では世界的にも芸術的水準の高い舞台芸術を創造すると明記してほしい。
② 創造活動支援機能ではアマチュアからプロへと活動の水準を上げ、芸術の創造が仕事になるような支援を行うと明記してほしい。
③ 鑑賞機能では、 現在福岡にはそこで評価されれば全国的・世界的に舞台芸術家がなることが出来るような批評が存在しない。プロの批評家の育成を行い。福岡で上演すれば全国的に世界的に批評されるような土壌を作ってほしい。たとえばエディンバラやアヴィニョンはその良い例である。
④ 交流機能では、若手の舞台芸術家(演出家、俳優、劇作家)を海外の演劇大学や劇場に5年以上派遣し、本格的な作品の作り方を学んできてほしい。海外で5年学んだ自分の経験から、語学の勉強も含めて5年はかかる。
⑤ 普及機能では文化芸術によって福岡の社会的・国際的問題が分かるような事業を行ってほしい。
⑥ センター機能では舞台芸術の専門知識を持った司書を置いてほしい。
⑦ 人材育成機能では文化芸術の創造をする人材育成には、先進地の欧州でも50年―100年の時間がかかっている本当に難しい仕事である。まず、欧州(イギリス、ドイツ、フランス、ロシア、北欧、ポーランド、ルーマニア)の国立演劇学校、演劇大学の育成がどうなっているか研究することから始めてほしい。さらに、3年以内という期限をきめて福岡に演劇学校と演劇大学を設置してほしい。

拠点文化施設の施設概要13ページ目について、150万都市福岡には舞台芸術専用の拠点文化施設が4つは必要である。たとえば50万都市のマンチェスターでさえ、4つの拠点施設を持っている。4つ程度無ければ、正統な舞台芸術から前衛までカバーできない。一人の芸術監督にすべてまかせるより、4つの施設に4人芸術監督がいた方が福岡市の文化的需要をカバーできる。

大ホール 13ページ目について、福岡市にはオペラ・バレエの専門劇場がないので、オペラ・バレエに対応できるようにしてほしい。オペラ・バレエは福岡市の文化的価値を国際的に広める大きな可能性を持っている。リヨンオペラやシュツットガルト劇場(オペラ、バレエ、演劇の3分野)、ロシア・マリンスキー劇場が地方都市のオペラハウスとして参考になるはずだ。

アーティストとの関係性15ページ目について、拠点文化施設の文化創造・発信に責任をもつ芸術監督は是非設置してほしい。ただし、欧州のように芸術監督に創造面での人事権を付与するべきである。たとえば芸術監督は演出家や俳優、舞台スタッフを自分で決める権利を持つべきだ。ただしこれは芸術監督だけでなく全てのスタッフ、アーティストを含めて1期3年契約で3回まで更新できるようにすべきである。同じ人材が公共劇場に10年以上勤務するのは人材の交流や流動に問題がある。また芸術監督は就任時に劇場の任期での政策を明記して市民に知らせてほしい。
地元の芸術家や人材は、アーティストやスタッフとして積極的に雇用してほしい。

再度、福岡市拠点文化施設基本構想(案)についての意見を述べる。ただし今回は概要版を基に意見を言っていく。

現代社会における文化芸術のあり方1ページ目について、舞台芸術を上演する劇場は魅力ある創造都市に貢献するだけでなく、都市の存在価値とアイデンティティーを決定する力があるという文章をいれてほしい。劇場は市民の誇りの象徴となるべきである。たとえば、ストラスブール、ハンブルグ、ミュンヘン、サンクト・ペテルブルグ、ミラノは世界的に有名な劇場、オペラハウス、バレエ団があるから、世界的に魅力ある都市となっているのである。

福岡市の創造活動と文化事業の現状1ページ目について、福岡市文化振興課と福岡市文化芸術振興財団について意見を述べる。この2つの団体は現在まで人材の90%程度が福岡市職員また、福岡市職員の出向という形をとっていた。福岡市職員は各職員が高額の賃金を受け取っている。にもかかわらずこの2つの団体の市職員は舞台芸術を高等教育機関で学んだ人材は皆無だった。また海外の劇場や演劇大学について調査できるような高度な外国語の知識を持った市職員もほとんどいなかった。したがっていままで何故福岡に舞台芸術の拠点文化施設や演劇大学がないのか私が聞いても嘘、無視、誤魔化しをうけるようなことが多くあった。したがって、この2つの団体から舞台芸術を高等教育機関で学んでない人材や語学に堪能でない人材は地方公務員法を改正して解雇するべきである。現在国が900兆の借金を抱え破たん寸前である日本で、能力のない人材に高額の税を使い賃金を払う必要はない。そうしなければギリシャのように国家破綻するのは時間の問題である。無能な人材を解雇した後、舞台芸術を高等教育機関で学びアートマネジメントのプロとしての経験があり、かつ外国語に堪能な人材だけをこの2つの団体は雇用するべきである。私は何故今まで福岡市に舞台芸術のための拠点文化施設と演劇大学が無かったのか今説明を求める。またこの2つの団体の職員が他の地方や海外の劇場や演劇大学にこれから視察や研修に行くなら、明細な報告書を書き市民に広く公開し、市民に還元する必要がある。

拠点文化施設の機能3ページ目について、センター機能を担う拠点文化施設の司書は常勤・非常勤両方とも、英語を含め最低2外国語に堪能であること。英語を含めた2外国語に堪能な司書が十分な数いなければ国際交流を担う拠点文化施設にはなれない。また、外国語でのコミュニケーションのためにプロとボランティアの通訳を十分に雇用するべきである。

拠点文化施設の位置づけ2ページ目について、福岡市拠点文化施設で上演される演劇は市民の対話のモデルとなるような舞台芸術作品を上演してほしい。たとえばイギリス・フランスでは公共劇場で上演される戯曲の対話が市民の対話のモデルとなっており、シェイクスピアやモリエールの戯曲を国語の時間で読むことは初頭・中等教育の全過程で行われている。
ここで上演される演劇は福岡市民とは誰なのか、良い面・悪い面を含めて劇作家の台詞を話す俳優の身体を通して見せなければならない。この舞台で立ち上がってくる演劇作品は福岡市とそれを取り巻く地域の歴史や関係を見せなければならない。

Ⅴ.拠点文化施設の運営とⅥ.その他の検討事項3ページ目について、事業、経営、技術の責任者の選任法についての意見である。これらの責任者の選任には文化施設の上部組織として拠点文化施設理事会を設置して、理事会によって選定されるべきである。理事の構成員は全員が舞台芸術の専門家であるべきである。たとえば、演劇・舞踊研究者、劇作家、演劇・舞踊批評家、オペラ研究者・批評家等で、人員数は10人程度が適当である。理事の任期は1期3年で最大3回までの更新とすべきである。つまり理事は10年以上理事にはなれないようにするべきである。理事の選定は九州アーツカウンシルを設置してアーツカウンシルの理事会で決定するのが良い方法である。芸術の専門家から成る九州アーツカウンシルは行政に代わって、国、自治体の文化予算を全額委託され各拠点文化施設の予算を決定する機能をもつ。九州アーツカウンシルは毎年度の予算決定に関する市民に対する情報公開を行わなければならない。また九州アーツカウンシルは年度ごとに各拠点文化施設に予算を配分する際、拠点文化施設の事業にたいする批評、観客動員、アーティスト、市民の意見を反映させるシステムを確立すること。

私の意見には欧州の都市の劇場や演劇学校の例が多く登場するので、参考資料として以下に代表的な欧州の主に地方都市の劇場・フェスティバル・演劇学校の名前とウエブアドレスを書きます。
イギリス:
1) ウエスト・ヨークシャープレイハウス(リーズ)http://www.wyp.org.uk/
2) トラヴァースシアター(エディンバラ)新人劇作家育成のための劇場
http://www.traverse.co.uk/
3) ロイヤル・コートシアター(ロンドン)、新人劇作家育成のための劇場
http://royalcourttheatre.com/
4) エディンバラ・フェスティバルhttp://www.eif.co.uk/
5) 王立スコットランドコンセルヴァトワールhttp://www.rcs.ac.uk/
6) バーミンガム大学(劇作家育成クラスを英国で初めて立ち上げた)
http://www.birmingham.ac.uk/schools/edacs/departments/drama/index.aspx
7) マンチェスター大学
http://www.arts.manchester.ac.uk/subjectareas/drama/
フランス:
1) ストラスブール国立劇場、附属演劇学校http://www.tns.fr/
2) リヨン劇場http://www.celestins-lyon.org/
3) アヴィニョン・フェスティバルhttp://www.festival-avignon.com/

ドイツ:
1) ターリア劇場(ハンブルグ)http://www.thalia-theater.de/
2) ミュンヘン小劇場http://www.muenchner-kammerspiele.de/home
3) フランクフルト劇場http://www.schauspielfrankfurt.de/
4) オットー・ファルクケンベルク演劇学校(ミュンヘン)http://www.muenchner-kammerspiele.de/ofs/
ロシア:
1) サンクト・ペテルブルグ・マールイドラマ劇場
http://www.mdt-dodin.ru/index.html
2) サンクト・ペテルブルグ国立演劇アカデミー
http://www.tart.spb.ru/
ポーランド:
1) スターリ劇場(クラクフ)http://www.stary-teatr.krakow.pl/
ルーマニア:
1) ラディウ・スタンカ劇場http://www.sibfest.ro/(シビウ)
2) シビウ国際演劇祭(同サイト)
スウェーデン:
1) 王立劇場(ストックホルム)http://www.dramaten.se/Dramaten/
2) 王立劇場附属演劇大学(ストックホルム、同サイト内)
オーストリア:
1) ウィーン芸術週間http://www.festwochen.at/index.php
2) マックス・ラインハルト演劇学校(ウィーン)
http://www.maxreinhardtseminar.at/mrs.php

オランダ:
1) ホーランド・フェスティバル
http://www.hollandfestival.nl/page.ocl?pageid=1
ロシア演劇留学の勧め。お金の話。
現在サンクトペテルブルグはマイナス3度です。今日は「おまえはロシアになんぞ演出を学ぶために留学していて贅沢だ」という批判にこたえて、私がペテルブルグでの演劇留学にいくらお金を使っているか公開します。

私が受けている科目は、舞台演出、舞台演技、発声、ダンス、舞台動作、アクロバット、声楽、ロシア語です。授業は週6日で基本的に9:30-22:30です。ちなみに学費は全て込みで年間約45万円です。また寮代は月に7千500円です。

これは贅沢かというとけしてそうではない。私が24歳のころ通っていた新劇系老舗劇団の養成所が安い方で年間40万だった。授業は週6日だけれど、夜3時間半のみだったので、1日12時間授業があるロシアの学校は日本の新劇養成所4分の1の学費なのです。しかも寮代は7千5百円で高熱水道ガス代込みです。おそらくロシアの演劇学校は生活費も考えると東京の新劇養成所の7分の1程度の値段なのではないだろうか。これは贅沢どころかかなり安価な値段だと言える。

といっても語学習得や生活の慣れ等を考えると留学は命がけです。現在私も舞台演出をロシアと欧州で必死で学んでいます。しかし全ての事務手続き(学校のスタッフや芸術監督・演出家との交渉ごと)も自分でこなしているのでかなり語学力、交渉力、忍耐が必要とされます。これは複雑すぎて言葉では書けない。演出や演技の秘密と同じことのような気がする。欧州での劇場での研修は並大抵の交渉力では実現できない。まして語学力が低くては話にならない。残念ながら、相手と同じかそれ以上の英語や他の言語の能力が必要です。こればかりは努力するしかない気がする。

最近かなり憂鬱な気分が続いていたのであまり劇場通いはできていない。ペテルブルグの冬は暗く寒いのでそれが原因かもしれない。ロシア人の友達と会って話すことでだいぶ癒されているような気がする。この出会いを運命に感謝したい。ありがとう!!!

しかし、最近ヴァレリー・ゲルギエフ指揮のドヴィッシー作『ペレアスとメリザンド』をマリンスキー・コンサートホールで聞いた。このオペラは滅多に上演されないので、初めて聞いたがとても感銘を受けた。いつか演出したいオペラである。ちなみにスタニスラフスキーも晩年はオペラの演出に集中していたようだ。オペラは演劇より幅広い観客を呼ぶことができる可能性がある。

2011年観劇回顧
以下の文章は演劇批評誌シアターアーツの年間回顧のために書きました。

日本では大震災が起こり、様々な政治・経済の問題が明るみになった。また中東・ロシアで民主化に向けた大規模な市民運動が起き、南欧では経済破綻による官僚や政治家に対する批判が起こった1年だった。このような世界の大きな問題をどう演劇が映し出すことができるか問われた1年だった。ロシアに住んでいるが、ロシアの民主化の動きにロシア演劇はほとんど影響を与えたと言えない。残念ながらロシアではインターネットの方が民主化運動に対して影響力があった。政治に対して無関心に見えたロシアの知的中産階級も30,40代を中心に政治や大企業の腐敗に対して強い不満を持っていたのだということが分かった。演劇の世界では、シュタイン、ドーディン、シェーロー、ムヌーシュキン等の巨匠が格の違いを見せつけた年だった。しかしドーネラン、タールハイマー、ムアワッドの舞台では俳優が役を生きるエネルギーが巨匠たちの舞台に拮抗していた。