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ロシア、サンクトぺテルブルグで演劇の演出を学んでいます。ロシアの演劇学校の授業内容。さらに、ロシアを中心としたヨーロッパ演劇の現状についてお伝えします。
アカデミー第3週 「自分の自然に聞くこと」と「生活を点検すること」
現在、ペテルブルグは最高気温17度です。コートを着ないと寒くなっています。

今週も訓練の科目は先週と同じだった。私は38歳なので、平均年齢19歳ぐらいのクラスメートと同じレベルで身体訓練をするのはきつい時があります。しかし、誰かが海外で俳優訓練の基本を学んで日本に導入しなければ日本の現代演劇の底上げにはつながらないので、なるべく努力してロシアで学びたいと考えています。

日本人は日本の現代演劇にすでに存在するトレーニングを追求すればそれで良いという考えが根強いが、私はこの考え方には疑問がある。小山内薫や岸田国士が西洋の演劇を日本化しようとしたことはまだ道半ばだと考えるからである。その証拠に日本の現代演劇にはこれが日本の現代俳優の演技だという正統が存在しないのである。正統な演技が存在しなければ異端としての前衛も高度な芸術としては存在できないだろう。なぜ、フランスの太陽劇団の俳優の演技が前衛でありながら、見る者の心をうつかといえば、コメディー・フランセーズなどの正統の演技を乗り越えたものを生み出しているからだろう。

さて、演技のクラスでは、今週も「与えられた状況」や「エチュード」を行った。マスターの助手が生徒の訓練やエチュードを見たあとによく言うことに「自分の自然にききなさい」と「自分の生活を点検しなさい」がある。たとえば、身体を緊張させると体が動かなくなることは前者にあたる。また。エチュードは無対象行動を行っているが、普段、食事をするとかシャワーを浴びる等なにげなく行っていることも無対象になると途端に具体的な行動ができなくなってしまう。エチュードでは具体的な行動をおこなって、虚構の状況を生きなければならないが、それが大変難しいと実感させられた1週間だった。私も「大魚を釣る」エチュードを見せたのだが、行動が具体的でないのと役を生きていないという部分を講師から指摘された。
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アカデミー第2週 俳優の仕事は軍隊のようなものだ
ペテルブルグは現在20度ぐらいですが、夜は10度ぐらいになるときもあり、いつもコートを着てアカデミーに通っています。

授業は今週も先週と同じで、バレエ、舞台動作、発声と演技だった。発声の授業は体全体を使って発声する訓練をするのがロシアの発声訓練の特徴だと思う。たとえば、立って、体全体を上下に動かしながら発声の訓練をするのが最もわかりやすい例だろう。

バレエの先生は元国立ボリス・エイフマンバレエ団のダンサーだった人で、よくエイフマンの事を授業中に話す。私もエイフマンバレエ団(ペテルブルグが本拠地です)が大変好きなので、バレエの先生の話は面白く聞いています。なぜスタニスラフスキーが俳優の訓練にバレエが必要だと考えたのか先生に聞いたところ、俳優の舞台での感情をバレエの訓練が助けてくれるからだと先生個人的には思うと教えてくれた。本当に親切な人である。私のロシア語の理解力が低いのでいつも気を遣わせている。申し訳ない。

演技の授業は二人の主任助手が交代で教えに来ている。
先週何度か一人の助手が、俳優の仕事は軍隊のようなものであるとスタニスラフスキーが言っていると繰り返し言っていた。そのとうり、時間を守ることが厳守されていたり、毎日皆で無言で一緒に座る訓練等を行っている。

さて、今演技のクラスで主に行っていることは、緊張と弛緩、与えられて状況を生きる、それから無対象行動によるエチュードである。無対象行動は俳優と観客がともに劇的な体験を共有する入口になると『俳優の仕事』にスタニスラフスキーが書いていた。
ぺテルブルグ生活 2年目が始まる
9月1日にぺテルブルグ演劇アカデミーでの2年目の授業が始まった。

私は演技と演出コースの1年目に研修生として在籍している。学生と研修生の違いは学生はすべての授業に参加できるが、研修生は選択して授業料を払った科目のみ受講できる。つまり、授業料未納の科目は見学のみできるということである。

さて、先週参加した主な授業は、言語活動(発声)、ダンス、アクロバット、舞台動作そして、演技だった。身体訓練の科目では身体の医学・身体生理学的機能を学んでいる。また、演技の授業は初めの4か月は台詞の訓練は最小限にして、人間の行動を探求することに集中するという説明がマスター(師匠)の助手からあった。

マスターは今マグニドゴルスクという別の都市で、演出の仕事をしていて、9月半ばごろぺテルブルグに帰ってくる噂である。

日本でいろんな人からブログを書いてロシアでの俳優育成について情報発信してほしいと言われた。私は週6日朝9時半から夜10時半ごろまで授業を受けているので、ロシアの俳優や演出家の育成についてこのブログで体系的に理解してもらうのは無理だと思う。

もしロシアの俳優養成について基本的なことを知りたい人がこのブログを読む方でいらっしゃれば、まずコンスタンチン・スタニスラフスキー著、堀江新二・岩田貴・安達紀子・浦雅春訳『俳優の仕事』全3巻未来社刊を読んでいただきたい。この本を読むことからしかロシアの俳優育成について理解することは始まらない気がする。